題名のない雑記帖

まだまだ道半ば。今はまだタイトルをつける時じゃない。

帰りたくない…でも帰らなきゃ


この時わたしはやっぱり帰りたくない思いに支配されていた。
なんでこの日までに離婚が成立していなかったんだろう。
あー、帰りたくないなーって、言ってしまいたい!
こんな台詞、人生で口にしたことないけれど。
こんな思いに支配されていたわたしは、山羊くんにはどう見えていたんだろう。


目は口ほどに物を言う。
この時わたしが何を考えていたのか、山羊くんにはお見通しだったのかもしれない。

「娘が待ってるよー。」

ふいに山羊くんが口を開いた。

山羊くんは独身で、わたしは人の親なのに…。しっかりしなきゃダメだ。
こんな風に諭されるなんて、軽蔑されてしまう。
それにしても山羊くんは常に冷静なんだもんなー。
でもこの日はいつも見せない顔を2回も見せてくれたから、かなりの収穫があったな。
そう思って氣持ちを切り替えることにした。

「俺も娘が欲しいよー。」

「え?娘が欲しいの?息子が欲しいのかと思ってた。」

「いや、息子でもいいんだけどさ笑。」

やっぱり山羊くんは、普通に結婚して、普通に子どもを持ちたいんだな。
ずっとずっと言ってたもんね…。

それでも、わたし達の出会いが遅かったなんて思わない。
あの時期に、あのタイミングで、あの出会い方だったからこそ、ここまで仲良くなれたんだ。あれ以上完璧なタイミングはない。だからこそ宿命の出会いだったとも思える。
この人生が終わらないと本当の答え合わせは出来ないけど、このことに関しては間違いないだろう。

「じゃあ、またね。」

「またね。氣を付けてね。」

名残惜しいけど、いつまでもぐずぐずしてるわけにもいかないので、まだ全然酒の抜けない身体に鞭打って歩き出した。

過去最高に、このまま一緒にいたいと思った夜だった。