題名のない雑記帖

まだまだ道半ば。今はまだタイトルをつける時じゃない。

映画館


いよいよ映画の上映時間になった。
席に着いて、少し山羊くんがジョークを言ってきたりして、そこまではよかった。

場内が静かになった途端気付いてしまった。

〝映画館の座席ってこんなに近かったっけ!?〟

 


余計な事を考えると変にドキドキしてしまうから、必死で平常心を保った。
そうこうしているうちに本編が始まった。

映画に集中しようと思ったのも束の間、

〝この人と手を繋ぎたいな。〟

自分の頭の領域ではないところから突然こんな声が降ってきた。

〝は!?さっき会ったばかりの人に対して何考えてんの!?
 頭どうかしてるんじゃないの!?〟

こんなこと人生で一度もない。どこからこの考えがきたのかもわからないし、一般的にカッコいい人と言われる部類だとは思うけどそれだけだ。
そもそも私の好みは塩顔だ。
一目惚れなど断じてしていない。
一体この現象はなんなのか。わたしは混乱して、結局前半一時間は全く映画の内容が頭に入ってこなかった。

後半やっと集中できたと思ったら初対面の男女で観るには気まずいシーンがあったりして、この映画に誘ってしまったことを少し後悔した。

そんな感じで自分の内面が忙しくて全然内容がわからないまま終わってしまった。

こちらから誘ったのにまともな感想も言えなかったらどう思われるかと思ってヒヤヒヤしたけど、相手の余韻を壊したくないと言って山羊くんは感想を言い合おうとはしなかったので助かった。